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遠くの異朝(いちょう)をとぶらへば、秦(しん)の趙(ちょう)高(こう)、漢(かん)の王莽(おうもう)、梁(りょう)の朱忌(しゅうい)、唐(とう)の禄山(ろくさん)、これらは皆(みな)、旧主(きゅうしゅ)先皇(せんこう)の政(まつりごと)にも従(したが)わず、楽しみを極め、諫(いさ)めをも思い入れず、天下(てんが)の乱(みだ)れんことを悟らずして、民間の愁(うれ)うるところを知らざりしかば、久しからずして、亡(ぼう)じにし者どもなり。
近く本朝(ほんちょう)をうかごうに、承(じょう)平(へい)の将門(まさかど)、天慶(てんぎょう)の純友(すみとも)、康和(こうわ)の義(よし)親(ちか)、平治(へいじ)の信頼(のぶより)、これらはみなおごれる心もたけきことも、皆とりどりにこそありしかども、間近くは六波(ろくは)羅(ら)の入道(にゅうどう)前太政(さきのだじょう)大臣(だいじん)平(たいらの)朝(あ)臣(そん)清(きよ)盛(もり)公(こう)と申しし人のありさま、伝え聞くこそ、心(こころ)も詞(ことば)も及ばれね。
其(その)先祖(せんぞ)を尋(たず)ぬれば、桓(かん)武(む)天皇(てんのう)第五(だいご)の皇子(おうじ)、 一品(いっぽん)式部(しきぶ)卿(きょう)葛原(かずらわら)親王(しんのう)、九代(くだい)の後胤(こういん)、讃岐(さぬきの)守(かみ)正盛(まさもり)が孫、刑部(ぎょうぶ)卿(きょう)忠(ただ)盛(もり)朝(あ)臣(そん)の嫡男(ちゃくなん)なり。 彼(かの)親王(しんのう)の御子(みこ)、高視(たかみ)の王、無官(むかん)無位(むい)にしてうせ給(たまい)ぬ。
其(その)御子(みこ)、高望(たかもち)の王の時、始(はじめ)て平(へい)の姓(しょう)を給(たまい)て、 上総(かずさの)介(すけ)になり給しよりこのかた、忽(たちまち)に王(おう)氏(し)を出(いで)て人臣(じんしん)につらなる。 其子(そのこ)鎮守府(ちんじゅふの)将軍(しょうぐん)義(よし)茂(もち)、後(のち)には国(くに)香(か)とあらたむ。
国(くに)香(か)より正盛(まさもり)にいたる迄(まで)、六代(ろくだい)は、諸国(しょこく)の受領(ずりょう)たりしかども、 殿上(てんじょう)の仙藉(せんぜき)をばいまだゆるされず。
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